蝶の夢

天候くもり 体重1.4kg増加

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

本の内容より抜粋
どうせ僕には、自分が見ているものしか見ることが出来ないんだ。「僕」には死んだはずの家族たちの姿が見える。一人、絵を描きながら過ごす「彼ら」との奇妙な日々がやがて、「僕」の本質を引きずり出す…。「しかしこの家は気持ち悪いな。きみの内臓のなかにいるみたいだ」。
 まあネタバレも含むけれどもここまで評価が真っ二つに分かれるのも珍しいが・・・これってライトノベルじゃないよね。俺は好きだけど。
 この作家の似たような人が書いた作品(某ゲームなんですが)の内容があらすじだけでも強烈だったので読んでみた。とにかく心理描写が丁寧なのもあるが、なにより読んでいて変な感じに陥ることも、嫌な気分になることもなくあっという間に読み切った。個人的に物語に出る主人公の従兄弟の駿兄さんの会話を読んでいると鼻の奥がツンとなったのに驚いた。章ごとに架空のモルフォ蝶(目のようなのが下の羽にある)が増えていくんだが・・・もう終章以前辺りでみっしりと蝶の模様で目に見える というのがまたなんともいえない。なにはともあれ次第に現実から妄想と現実のボーダーを行ったり来たりになっていく主人公や、一応の伏線を回収しつつ結局主人公はどうなったのかは描かれず唐突に終わる。芥川の羅生門もこんな感じだったな。
 以下独り言とネタバレ、なんだかんだで終章の現実と妄想の境目で主人公から見た叔父夫婦達の心理、親友と狂った同級生の関係、そして死んでしまった従兄弟・・・少なくとも従兄弟の兄は妄想の話であるとして、叔父夫婦の心理は莫大な保険金と放蕩息子の死によって外面と内面がそうなってもおかしくはなく、メタなのか現実なのか難しいところだなあと思う。親友と同級生は現実で起こったことを主人公自身が親友を諭したいが言うと面倒なため、夢の中で吐露しているとも取れる。なにより同級生に親友は何をしたか、全く書かれていないのも特徴である。個人的に駿兄さん(従兄弟、ある意味元凶か)の言葉ひとつひとつが不思議な感じだったりする。「しかしこの家は気持ち悪いな、きみの内蔵のなかにいるみたいだ」や「だがこの世で永遠なのは自分だけだよ。他人は死んでかわいそうだけれども、僕が死んだら僕の意識は消えているからね。」みたいなことや「死ぬ経験を僕らはしたことがない。まさに死んでからのお楽しみってやつさ」とか。どっかで似たような考え方の人がいたなあとか思った。
 まあなんにせよ、この作家さんの犬憑きさんがはもうちょい明るいらしいし楽しみである・・・しかし「暗い部屋」はどうしたものか。

 今日はこの辺で